2016年07月26日
銀鼠奇譚 ⑫ 警察署長
さて、まだまだ渋い脇役が残っています。
この役も、登場時間は僅かなもののドラマの設定に欠かせない役。
江戸時代より続く盗人一門は、子分たちを束ねる上でも、また大仕事を綺麗に仕上げる上でも、多くの人脈を必要とし守ってきた。
敵であるはずの警察との繋がりは、まさに切っても切れないものであった。
劇中5分ほどのシーンだが、大黒鼠の姐さんと柳鼠の姐さんが、警察署長を訪ねて行くというシーンがある。鼠一門の世界観というか、歴史を感じさせるシーンなのだが、ここもまたノスタルジックな世界と現実の事件を橋渡しする重要な場面となっている。
登場する警察署長はキャリアではない、いわゆる叩き上げの所長である。所轄の所長を最後に定年を迎える彼が、街のお巡りさんとして勤め始めたのは、昭和50年前後だろう。その頃は時代が大きく変化し、盗人一門をはじめ古き良き時代の様々なものが消え始め、世間はこぞって新しいものを求めていた。
新米巡査の彼が警察署から出て来ると、署員専用口(裏口)にハイヤーが横付けされ、その頃でもほとんど見かけなくなった和服姿の紳士がサッと降り立ち、建物内に消えていった。誰に訊いてもそれが誰なのか教えてくれない。その時の和服の紳士こそ、鼠一門を率いる大黒鼠の親分であったことを知ったのは、彼が所轄の次長(副所長)になってからのことだった。いや、正確に言うと、盗人一門と警察とは明治以前から何かとつながりがあるとは噂で聞いたことがあった。したがって上司からそのことを告げられたのが、次長の任に就いた時なのである。
勿論警察が犯罪に加担するなどということはないが、重大事件で手詰まった時など、一門の持つ情報は大きな力になる。その見返りに関しては、時々の所長の裁量・・・といったところだろうか。
鼠一門がいつしか消えようとしている現在、この署長の次の世代がこれまで通り一門に一目も二目も置くとは限らない。科学捜査、捜査の透明性などと言われる時代である。
たった5分のシーンだが、こんな思いを感じてもらえれば・・・
是非、飯山でご覧いただきたい。
by モンキリ王子