今回の「煉瓦堂」成功、最大の功労者はこの「古平」だろう。演じたのはコダ社長。
実は、最後の最後まで蓮河京介の親友古平の役作りで悩み続けていた。
彼が“空素”の舞台に初めて立ったのは「R」だ。
地下街で暮らすミュージシャンと言う役を、長野でバンド活動をする彼に客演を依頼した。
この時はそんな関係だったのだが、それから1年を経た時、彼から「演劇をやってみたい」と、アプローチがあった。
そこで演じたのが、「we are earthling」の寿司屋だ。
演劇、演技、俳優と言うのには、「癖になる」と言うのがある。
元々ミュージシャンも俳優も、表現者だということは共通する。もっと色々なことを表現したい。もっと色々な方法があるのではないか。
そこに入っていくのは自然なことだと思う。
そして彼は「新・SHOT GUN」で、ボディーガード古平を演じることになる。
前置きが長くなってしまいました。
コダ社長は演劇素人です。まぁ、それはみんな同じか・・・
上手じゃないんです。
だからいつも上手くいかないことにぶつかっている。じれったくて、歯がゆくて仕方ないのは多分本人だと思う。
でも、それを必ず超えることが出来るということも、彼は知っていたんだと思う。
音楽もそうやってきたのだろう。
あとはその時がいつ来るのか。そのタイミングを絶対に逃してはならないということ。
彼はそれを逃さなかった。飯山公演、「煉瓦堂」初演の3日前。
煉瓦と古平の回想シーンの練習中、中村祐子が号を煮やして代役を買って出たのだ。
20年ぶりに蓮河と再会した古平の役だ。
男と男の再会を、祐子と中村がそのシーン(20秒ほどだろう)を演じて見せた。
古平のすべてが変わった瞬間だった。
前々から言っていた。古平がラストシーンで涙を誘うのは、回想シーンじゃない。「認知症」のシーンだ。
その認知症のシーンまでも、全く変わってしまったのだ。
そこからは何も言うことはなかった。「古平」にコダ社長がなった瞬間だ。
ラストシーン。古平が聖子に手を引かれ去っていくシーン。
あの時の彼の表情は忘れられない。何度繰り返しても。
公演の成功を確信した。
演劇が何より面白いと思う理由がここにある。
車輪が地面から離れた。それを感じた時、それが「癖になる」理由なのだ。
by モンキリ王子